「手数料0円」には2つの意味がある
飲食店がモバイルオーダー(QRオーダー)に払う可能性のあるお金は、大きく2種類に分かれます。
- サービス利用料(固定費) — 月額や買い切りなど、売上に関係なく決まった額を払うもの。
- 決済手数料(変動費) — システム経由で決済された売上に対して、3%前後の割合でかかるもの。
広告の「手数料0円」が前者を指すのか後者を指すのかで、意味はまったく違います。月額0円でも決済手数料がかかるサービスもあれば、決済手数料0円でも月額や買い切り費用がかかるサービスもあるからです。
どちらが正直でどちらがズルい、という話ではありません。ビジネスモデルの構造が違うだけです。以下で順に見ていきます。
月額0円系のサービスは、決済手数料で成り立っている
「月額0円で始められる」タイプの代表例です(2026年7月確認時点)。
- Square — テイクアウト・デリバリー用のQR注文は月額0円+決済手数料。店内セルフオーダーは有料プランが必要で、プラスが月3,375円+3.6%、プレミアムが月9,180円+3.3%。
- STORES モバイルオーダー — テイクアウトのみなら月額0円プランあり。店内のテーブルオーダーは月額9,900円〜+注文経由の決済に3.6%+10円。
- Airレジ オーダー(店外版) — テイクアウト向けは月額0円+注文額の3%(店内モバイルオーダーは月額17,600円の別体系)。
月額を0円や低額にできる理由は明快です。注文と一緒に決済を自社システムに通し、その決済手数料で収益を得る設計だからです。
これは「カラクリ」というより合理的な構造です。客はスマホで注文から支払いまで完結でき、店はレジでの会計作業が減ります。売上の数%は、その便利さの対価です。
注意点はひとつ。決済手数料は売上に比例して増え続ける変動費で、繁盛するほど支払いが増えます。固定費と変動費の違いはモバイルオーダーの費用相場の記事で解説しています。
では逆に、「決済手数料0円」はどう成立しているのでしょうか。
決済機能を持たない型は、なぜ手数料0円にできるのか
種明かしは単純で、そもそも決済を扱わないからです。
このタイプは、注文の受け付けだけをデジタル化します。客は席のQRコードから注文し、会計はこれまで通り店のレジで行います。現金でも、店がすでに契約しているキャッシュレス端末でも構いません。
お金の流れにシステムが介在しないため、手数料を取る場所が構造上存在しません。「取らない」のではなく「取れない(取る仕組みがない)」のです。
2026年7月確認時点の例を挙げます。
- タクメニュー — 29,800円(税込)の買い切りのみ。月額0円・決済手数料0円。決済機能はなく、会計は店の既存レジ。
- Cloud Menu — 初期0円・月額約4,800〜8,500円の決済機能なし型。
なお、買い切りと月額のどちらが総額で安いかは、比較相手の月額と利用期間次第です。短期利用なら月額型の方が安く済む場合もあります。買い切り型モバイルオーダーの記事で損益分岐を含めて比較しています。
次に、決済手数料が実際いくらになるのかを月商別に見てみます。
月商別に見る、決済手数料の実額
決済手数料3.6%を例に、月商とキャッシュレス比率(=システム決済を通る売上の割合)ごとの支払額を計算します。前提は「モバイルオーダー経由の決済にのみ手数料がかかり、現金会計分にはかからない」というシンプルなモデルです。
| 月商 | システム決済分(比率50%) | 手数料3.6%/月 | 年間 |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 25万円 | 9,000円 | 108,000円 |
| 100万円 | 50万円 | 18,000円 | 216,000円 |
| 150万円 | 75万円 | 27,000円 | 324,000円 |
| 200万円 | 100万円 | 36,000円 | 432,000円 |
月商100万円・キャッシュレス比率50%の店なら、月18,000円・年間216,000円です。STORESのように「3.6%+10円/件」と1件ごとの固定額が加わる体系では、実額はこれよりやや大きくなります。
また、Squareプレミアムの3.3%のように率が低いプランは、代わりに月額(9,180円)がかかります。率と月額はトレードオフの関係にあることが多く、自店の月商と客単価で計算しないと損得は分かりません。試算は料金シミュレーターをご利用ください。
なお、この手数料が「高い」と一概には言えません。決済連携型では客が席で支払いを終えるため、レジ対応の人手が減ります。最低賃金が2025年度に全国加重平均1,121円(前年比+66円)まで上がった今、人件費の削減効果が手数料を上回る店も十分あり得ます。
実額の感覚がつかめたら、あとは自店との相性です。
どちらの型が向いているか
決済連携型(月額0円系・手数料あり)が向く店
- これからキャッシュレス化を進めたい店。注文と決済を一つの契約でまとめられます。
- テイクアウト・事前注文が中心の店。月額0円プランの恩恵をそのまま受けられます。
- 会計の人手をとにかく減らしたい店。席で支払いが完結する価値は大きいです。
非決済型(手数料0円系)が向く店
- すでにレジとキャッシュレス端末があり、会計のやり方を変えたくない店。
- 売上に比例する変動費を持ちたくない店。費用が固定なので予算が立てやすくなります。
- 注文取りの負担だけを解消したい席数30以下の店。詳しくは小規模店向けQRオーダーの記事をご覧ください。
逆に言うと、決済連携を必要とする店に非決済型は向きません。タクメニューも決済機能を持たないため、モバイルオーダー上で支払いまで完結させたい店には不向きです。客のスマホがブラウザで通信する仕組み上、電波の届かない場所でも使えません。
最後に、「0円」広告を読み解く3つの習慣をまとめます。
「0円」広告の読み方 — 内訳を確認する習慣
誇大とまでは言えなくても、「0円」を強調する広告は、0円でない部分が目に入りにくい作りになりがちです。検討時には次の3点を確認してください。
- 0円なのはどれか。 初期費用・月額・決済手数料のうち、どれが0円でどれが有料かを分けて読む。3つすべてが0円のサービスは基本的に存在しません(事業として成立しないため)。
- 売上比例の%はあるか。あるなら「自店の月商×システム決済比率」で年額に換算する。月では小さく見えても、年間では固定費型を上回ることがあります。
- 周辺費用はないか。Airレジ オーダーの店内版はキッチンプリンター利用で初期110,000円、ユビレジのQRオーダーはPOS本体(月額7,590円〜)が別途など、本体料金の外側もチェックを。
この確認は、当サイトを運営するタクメニューにも同じように向けてください。29,800円の買い切りには初期設定代行(メニュー登録・QR発行・通知テスト)が含まれ、支払いは動作確認後です。決済機能がないこと・会計は既存レジのままであることは、契約条件のページで契約前に確認できます。
まとめ
「手数料0円」は嘘ではありませんが、それだけでは判断材料になりません。月額0円型は決済手数料で回収する構造、手数料0円型は決済を扱わない構造——どちらも合理的で、向く店が違うだけです。
キャッシュレス化を同時に進めたいなら決済連携型、レジも決済もすでにあるなら非決済型が有力です。セルフオーダーの利用経験率が67.5%(ホットペッパーグルメ外食総研・2025年8月発表)に達した今、「自店に合う構造はどちらか」を実額の計算で決めましょう。
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